びあぶれいく
Orion
沖縄のヒーロー&ヒロイン

 鬼大城は、この名前の他に夏居数(かきょすう)、大城勇、越来親方(ごえくうぇーかた)という、三つの名前を有する。
「護佐丸(ごさまる)・阿麻和利(あまわり)の変」の、もう一人の主役である。
 鬼大城は、その生没年は歴史上不詳となっている。その背景には、時の政治の波が渦巻いており、鬼大城はその大きな渦に巻き込まれて消えてしまった、英傑と言える。
 鬼大城は、具志川市・天願川の支流、川崎川の上流にある仲嶺にあった喜屋武城で、一四二〇年代頃、城主の子として誕生したと伝えられる。尚巴志(しょうはし) >
が、三山統一(さんざんとういつ)をする約十年くらい前、まだ、戦国の余韻の残る時代である。
 幼い頃に父を失った鬼大城は、母と弟二人とともに、母の実家である知花城に移り住み優れた武人として成長する。成人の後、当時、越来城の主であった尚泰久(しょうたいきゅう)に仕え、実力を蓄えていったと考えられる。
 鬼大城の由来については、「その人となりや、忠義剛直にして武勇無比、骨格人と異なり、勢い狼虎(ろうこ)の如し、これによりて当時の人、鬼大城と呼ぶ」とある。
 鬼大城は、阿麻和利に嫁いだ王女・百度踏揚(ももとふみあがり)の付き人として、主君である国王・尚泰久の意を受け、勝連城に出向させられた。ここから、鬼大城の人生の歯車が狂ってくるのである。
 阿麻和利・百度踏揚夫婦の不仲に巻き込まれた鬼大城は、百度踏揚の勝連城脱出の手引きを務め、首里城へと帰還する。阿麻和利が首里王府軍の大将として、護佐丸を滅ぼした直後のことである。
 阿麻和利謀反という二人の報告を聞いた、国王・尚泰久は、一四五八年、鬼大城に官軍大将を命じ、阿麻和利討伐の指揮をとらせた。難攻不落の勝連城攻略の為に、鬼大城は女装して城内に忍び込み、阿麻和利の首級を挙げた。鬼大城は、この戦いで弟二人を失う事にもなる。
 逆賊・阿麻和利討伐の戦功をたてた鬼大城は、尚泰久に、越来親方として越来城主の位を授ける。その後、百度踏揚を妻として迎えた鬼大城は、不思議な結末をたどる事になる。尚泰久の息子・尚徳王を追い落とし、新国王となった、第二尚家の祖、尚円金丸(しょうえんかなまる)によって討伐されるのである。
 一説によると、洞窟で煙り責めにあって非業の最期を遂げたとも伝えられている。なぜ、逆賊・阿麻和利を討った救国の英傑、鬼大城が討たれるのか?その理由は、歴史の記録に現れてこない。まるで、阿麻和利討伐の全ての謎を消し去るかのような、政治的処置とも言える。その結果、鬼大城を滅ぼした金丸は、以降、四百年に渡る第二尚家繁栄の祖と称えられている。

悲劇の英傑 鬼大城
亀島 靖プロフィール
1943年沖縄県那覇市生まれ。劇作家、プロデューサー。
主な著書に、「琉球歴史の謎とロマン1〜3」、琉球新報 新聞小説「三十六の鷹」、沖縄県広報誌「琉球歴史人物伝」、沖縄テレビ「沖縄の昔ばなし」原作、琉球放送「源為朝伝説を追え」脚本、CD「耳で聞く琉球歴史の謎とロマン」など。
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